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業種別売却ガイド

飲食店の売却相場はいくら?価格の決まり方と手残りを増やす準備

飲食店を居抜き、事業譲渡、株式譲渡で売る場合の価格の見方を解説。公的資料に沿った計算例と、厨房設備・賃貸借契約・営業許可の確認事項を整理します。

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飲食店の売却価格は、坪数や月商だけでは決まりません。何を買い手へ渡すのかを先に分けると、価格の根拠が見えてきます。 内装・厨房設備を渡す居抜き、店名やレシピ、従業員、取引関係まで渡す事業譲渡、会社そのものを渡す株式譲渡では、買い手が引き受けるものも、売り手に残る債務も違うからです。

公的資料が示す企業価値の算定方法には、純資産を基礎にする方法、将来の収益を見込む方法、類似会社と比べる方法があります。ただし、算定結果がそのまま成約価格になるわけではありません。最終的な価格は、店舗の収益力、賃貸借契約、設備の状態、許認可、買い手候補の数などを材料に交渉して決まります。

この記事では、2026年7月21日に確認した中小企業庁・経済産業省・厚生労働省の資料を基に、飲食店の売却価格を試算する順番を説明します。インターネット上の成約事例や「営業利益の何年分」といった数字だけを、自店の相場として当てはめないでください。

まず「居抜き・事業譲渡・株式譲渡」のどれを売るか決める

同じ飲食店でも、売却の対象を変えると価格の意味が変わります。

売却方法主に引き継ぐもの主なメリット売り手側で確認すること
居抜き・造作譲渡内装、厨房設備、什器、造作設備・内装を活かし、閉店・開業の工事負担を抑えやすい賃貸人の承諾、リース品、原状回復義務、設備の所有者
事業譲渡選んだ資産・負債、店名、レシピ、契約、従業員など売る資産・契約・事業を選びやすい個別契約の承継、従業員の同意、対価の資産別配分、消費税
株式譲渡店を運営する会社の株式。会社の資産・負債・契約は原則その会社に残る会社の契約関係を保ちやすく、事業全体を引き継げる簿外債務、複数株主、経営者保証、会社全体を渡す条件

居抜きは、買い手が内装工事や設備調達の時間を短縮できる点に価値があります。一方、常連客との関係、レシピ、従業員、予約アカウントなどが対象外なら、事業の収益力まで価格に乗るとは限りません。造作の取得価格だけでは、現在の価値を判断できません。現時点の使用可能性や撤去費、店の立地と業態が次の買い手に合うかで変わります。

事業譲渡では、店の運営に必要な資産と権利を選んで移します。不要な事業や債務を切り離しやすい反面、賃貸借契約、仕入契約、決済サービス、従業員との雇用契約などを一つずつ確認する手間が生じます。用語の意味を先に確かめたい場合は、M&A用語辞典から整理できます。

株式譲渡は、法人が営む店と会社の他事業をまとめて引き継ぐ場面で使われます。契約関係を会社に残したまま株主を替えられることが多いものの、会社に潜む債務や過去の税務・労務上の問題も調査対象です。一店舗の個人事業には、譲渡できる株式がありません。

飲食店を売却する流れは六つの段階

  1. 目的と売却方法を決める:残したい事業、希望時期、居抜き・事業譲渡・株式譲渡のどれを検討するか整理する
  2. 資料と権利関係を集める:決算、賃貸借、設備の所有、許認可、従業員、借入・保証を確認する
  3. 価値と手残りを試算する:資産・利益を見直し、希望条件と税金・費用を同じ表に置く
  4. 買い手候補を探す:店名を伏せた概要から始め、秘密保持後に詳しい情報を段階的に開示する
  5. 条件合意と調査を進める:基本合意、デューデリジェンス(DD)、賃貸人の承諾や許認可の確認を行う
  6. 最終契約と引継ぎを実行する:代金、資産・株式、契約、従業員、営業体制を合意した日程で引き継ぐ

案件によって工程の省略や前後はあります。必要な書類と判断時期は会社売却の10ステップで詳しく確認できます。

価格の入口は資産、利益、買い手から見た回収可能性

中小企業庁の「中小M&Aの譲渡額の算定方法」は、簿価純資産法、時価純資産法、類似会社比較法を主な手法として紹介しています。飲食店の初期検討では、貸借対照表を時価に直した純資産に、利益を生む力を加えて考える方法が分かりやすいでしょう。

時価純資産は、帳簿の純資産をそのまま使う数字ではありません。厨房設備や在庫の実在性・換金可能性を確認し、簿外のリース債務、退職給付、未払残業代なども検討します。古い冷蔵庫が帳簿上は残っていても、故障が近く撤去費がかかるなら、買い手にとってプラス資産とは言いにくくなります。逆に、帳簿に表れにくい好立地の賃借条件や再現可能なオペレーションは、交渉材料になり得ます。

公的資料には、時価純資産または簿価純資産へ「数年分の任意の利益」を加算する場合があり、年数は通常1〜3年と記載されています。利益の種類は税引後利益や経常利益など案件ごとに異なり、交渉で決まります。設計段階の試算で「時価純資産+営業利益×2〜5年」と置く例はありますが、2〜5年を飲食店の公的な相場として断定できる資料はありません。 年数だけを先に決めず、どの利益を使い、なぜその期間で回収できるのかを説明する必要があります。

たとえば、時価で見直した対象資産から対象負債を引いた額が400万円、調整後の年間利益が300万円だとします。利益2年分を加える単純な試算なら1,000万円です。

400万円 + 300万円 × 2年 = 1,000万円

これは査定額でも最低売却額でもありません。オーナーだけが長時間働いた結果の利益なら、買い手が代わりの店長を雇う人件費を差し引く必要があります。近く退去期限を迎える、主要設備の更新が迫る、営業日を増やす余地があるなどの条件でも結果は動きます。赤字でも、立地や設備、ブランド、許認可の承継可能性に価値があれば取引の余地はありますが、利益加算をそのまま使うのは難しいでしょう。

飲食店では六つの要素が価格交渉を動かす

賃貸借契約を買い手が続けられるか

店舗価値の前提は、その場所で営業を続けられることです。名義変更や転貸が禁止されていないか、譲渡に賃貸人の承諾が必要か、保証金をどう扱うかを確認します。株式譲渡でも、支配権の変更を契約解除事由とする条項があれば手当てが必要です。駅前の好立地でも、買い手が契約を引き継げなければ評価は下がります。

厨房設備と造作を本当に所有しているか

冷蔵庫、食洗機、POS、空調がリースや割賦なら、自由に譲渡できるとは限りません。取得年月、型番、修理履歴、所有者、残債を一覧にすると、買い手は更新費を見積もれます。写真だけで「設備一式」と説明するより、動作確認記録があるほうが話は早く進みます。

利益を買い手が再現できるか

月商が同じ二店でも、原価率、人件費、家賃、営業時間は違います。直近3期分の確定申告書や決算書に加え、月次売上、予約経路、原価、人員配置を示してください。オーナー個人の調理技術や人脈に売上が集中している場合は、引継ぎ期間やレシピの標準化を条件へ入れます。

店名・口コミ・予約アカウントを移せるか

商標、ドメイン、電話番号、SNS、予約サイト、Googleビジネスプロフィールは、契約主体と移管可否がそれぞれ異なります。アカウントの規約に反する譲渡は避け、正規の管理者変更手続きを確認します。店名を残すなら、買い手が使える範囲と品質管理の責任も契約で定めます。

営業許可と衛生管理を引き継げるか

2023年12月13日以降、食品衛生法に基づく飲食店営業は、一定の事業譲渡で承継届により営業者の地位を引き継げる仕組みになりました。この場合、新規許可の取得に代わる手続きとなります。ただし、譲渡を証する書類等が必要で、施設や事業の一部だけを動かす場合の扱いも確認が要ります。厚生労働省は、譲渡人が管轄保健所へあらかじめ相談するよう案内しています。深夜酒類提供、酒類販売、風俗営業など別制度の届出・許可は同じ扱いとは限りません。

買い手候補が複数いるか

価格は、計算式と交渉環境の両方に左右されます。同業者は設備や商圏を評価しやすく、異業種の買い手はブランドや人材を重く見るかもしれません。ただし、情報を広く出せばよいわけではありません。店名を伏せた概要資料から始め、秘密保持契約を結び、開示範囲を段階的に広げます。

手残りを増やす準備は「高く見せる」ことではない

一つ目は、個人利用と事業利用を分けることです。私物、会社所有、リース品が混ざったままでは、対象資産を確定できません。役員借入金、仮払金、未払金も明細を作ります。

二つ目は、利益の再現性を資料で示すことです。毎月の売上・原価・人件費を同じ基準で締め、臨時休業や一時的な修繕費には説明を添えます。都合の悪い月も資料に含め、変動理由を開示します。そのほうが、デューデリジェンスで数字が崩れる危険を減らせます。

三つ目は、譲渡後の引継ぎを具体化することです。仕入先の紹介、レシピ研修、従業員面談、常連客への告知を誰がいつ行うか決めます。売り手の協力が3か月必要なら、その業務内容と対価も売却条件に含めます。

四つ目は、税金と費用を売却価格から分けて試算することです。仲介手数料、専門家費用、設備の修理、賃貸人への支払い、税金を差し引いた後が手残りです。株式譲渡と事業譲渡では、対価を受け取る主体と税務が異なるため、税理士へ個別に確認します。

査定を依頼する前に十点を一枚へまとめる

初回相談までに、次の情報を揃えておくと比較可能な提案を受けやすくなります。

  • 直近3期の決算書または確定申告書と、直近12か月の月次損益
  • 店舗の所在地、席数、営業時間、定休日、業態
  • 賃貸借契約、保証金、家賃、残存期間、名義変更条件
  • 厨房設備・造作の一覧、所有区分、取得年、修理履歴
  • 従業員数、雇用形態、賃金、引継ぎ希望
  • 営業許可、届出、酒類関係などの許認可
  • 主要な仕入先、予約経路、売上構成
  • 借入金、リース、未払金、経営者保証
  • 店名、商標、ドメイン、SNS等の権利関係
  • 希望時期、譲れない条件、売却後に協力できる期間

金額だけを聞くと、対象範囲の違う査定を比べることになります。「株式価値なのか」「事業資産の対価なのか」「仲介手数料や負債を含むのか」を書面で確認してください。会社売却の10ステップに沿って準備すれば、価格と契約条件を同時に見られます。

飲食店の相場は、引き継げる価値を分解して確かめる

飲食店の売却価格に、全店共通の坪単価や利益倍率はありません。居抜きなら造作と賃貸借、事業譲渡なら選んだ資産・契約・収益力、株式譲渡なら会社全体の資産・負債・将来利益を見ます。最初に行うべきことは、希望価格を決めることより、買い手へ何を渡せるかを一枚にすることです。

譲渡条件を確定する前に、保健所へ営業許可の承継手続きを、税理士へ税額と対価配分を、弁護士へ契約と賃貸借の条件を確認してください。売却を急いでいても、設備所有者と経営者保証だけは未確認のまま進めないでください。

参考にした一次情報

この記事は2026年7月21日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。売却価格、税務、許認可、契約の扱いは案件により異なります。個別の判断は、税理士・弁護士・行政書士などの専門家と所管行政機関へご相談ください。

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中小企業庁や国税庁などの一次情報を優先し、会社売却・事業承継を初めて検討する方の判断材料を整理します。個別の税務・法務判断には踏み込みません。

  • 公的機関・各社公式サイトを優先して参照
  • 制度・料金情報は調査日と更新日を確認

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