本文へ移動
ウルコト
業種別売却ガイド

飲食店を売却する方法|準備から成約までの流れと必要期間

「飲食店 売却 流れ」を、準備・買い手探し・調査・契約・引継ぎに分けて解説します。必要期間は、売却方法と許認可、賃貸借、雇用の整理状況を確認し、自店固有の工程から判断します。

執筆・編集: 編集方針

一次情報
3
専門家監修
なし
広告・PR
なし

飲食店を売却する方法は、会社の株式を譲る「株式譲渡」と、店舗や営業上の資産・契約を選んで譲る「事業譲渡」が中心です。売却条件の整理から資料準備、買い手探し、基本合意、買収監査(デュー・ディリジェンス)、最終契約、決済・引継ぎへ進みます。

必要期間に一律の目安はありません。厨房設備がそろい営業中の店舗でも、賃貸借契約、営業許可、従業員の雇用をどう引き継ぐかで工程が変わるからです。早さを左右する最初の条件は、店を含む会社を売るのか、特定の店舗・事業を売るのかという方法の選択にあります。

価格の見方と手残りを増やす準備は、飲食店の売却相場と価格の決まり方で整理しています。

飲食店を売却する2つの方法

株式譲渡:会社の株主を買い手に替える

法人が運営する飲食店では、経営者などが保有する株式を買い手へ譲る方法があります。運営会社そのものは存続するため、会社が持つ店舗設備、債権・債務、雇用関係なども原則として同じ会社に残ります。複数店舗を会社単位で引き継ぐ場面にもなじみます。

一方、買い手は帳簿に表れにくい債務や過去の法務・労務上の問題も含めて会社を調べます。借入れに経営者保証が付いている場合、株式譲渡後も保証が残る可能性があります。中小企業庁は、M&A成立前に士業等の専門家、事業承継・引継ぎ支援センター、保証の提供先である金融機関へ相談することを選択肢として示しています。

事業譲渡:譲る店舗・資産・契約を決める

事業譲渡では、内装、厨房機器、在庫、商号・ブランド、レシピなど、対象を契約で特定します。法人が一部店舗だけを売る場合や、個人事業主が店舗事業を売る場合の中心的な方法です。買い手が引き受ける範囲を選びやすい反面、賃貸借や取引契約、雇用などを項目ごとに確認する必要があります。

設備とともに営業を引き継ぐには、物件を継続利用できるか、従業員が買い手の下で働く意思があるか、営業許可の承継手続をいつ行うかを確かめます。2026年5月25日適用の厚生労働省「事業譲渡等指針」は、事業譲渡で労働契約を承継する際、労働者本人の真意による承諾を得るよう求めています。

会社全体の承継には株式譲渡、対象店舗の切り出しには事業譲渡が選択肢になります。不要な債務の有無、契約上の制限、税務上の違いまで比べて最終決定します。

飲食店 売却 流れの全体像

2026年8月4日に確認した中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、譲り渡し側の工程を、事前準備からマッチング、基本合意、デュー・ディリジェンス、最終契約、クロージングへと整理しています。飲食店では次の順に具体化すると、途中の手戻りを見つけやすくなります。

1.売却の目的と譲れない条件を決める

「後継者不在を解消したい」「一部店舗に経営資源を集中したい」など、売却の目的を言葉にします。そのうえで、希望する譲渡対象、従業員の雇用、店名の継続、引継ぎに対応できる期間、経営者保証の扱いを整理します。

条件を増やすほど候補先は狭くなり得ます。絶対条件と、相手の提案に応じて調整できる条件を分けることが、買い手探しを止めない基準になります。

2.店舗と経営資料を整える

買い手が判断できるよう、会社・店舗の実態を資料にします。主な確認対象は次のとおりです。

  • 決算書、税務申告書、店舗別の売上・利益を確認できる資料
  • 賃貸借契約書、設備の所有・リース一覧、修繕履歴
  • 営業許可関係の書類、店舗図面、衛生管理に関する記録
  • 従業員名簿、雇用契約、賃金や勤務条件
  • 仕入先、予約・デリバリー、決済サービスなどの契約
  • 借入金、経営者保証、未払金、係争や行政対応の有無

資料がないことを隠すより、欠けている範囲と再作成できる資料を早めに示す方が、調査時の説明が一貫します。個人支出と店舗支出が混在している場合や、店舗別損益が分からない場合は、税理士と整理して収益力を説明できる状態にします。

3.支援先を選び、契約条件を確認する

相談先には、事業承継・引継ぎ支援センター、金融機関、M&A仲介者・FA、士業等専門家などがあります。中小企業庁によれば、事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県で相談対応や計画策定、M&Aのマッチング支援などを原則無料で行っています。

民間の仲介者・FAへ依頼する場合は、着手金、中間金、成功報酬、最低手数料の有無と、各工程の支援範囲を確認します。専任条項、直接交渉の制限、契約終了後も報酬が生じ得るテール条項も、署名前に対象と期間を読みます。

4.匿名で候補を探し、秘密保持後に情報を開示する

店名を伏せた概要資料で候補を探し、関心を示した相手と秘密保持契約を結んだうえで詳細を開示します。従業員や取引先に未確定情報が広がると、退職や取引条件の変更につながりかねません。店名を含む情報の開示時期と範囲を管理します。

候補先は提示価格だけで選びません。資金の裏付け、飲食事業の運営体制、雇用やブランドへの考え方、過去の買収後の運営状況を確認します。中小企業庁も不適切な買い手との成約後トラブルに注意を促しており、違和感があれば専門家や事業承継・引継ぎ支援センターへの相談を案内しています。

5.面談・条件交渉を経て基本合意する

経営者面談などで、売却理由、店舗の強みと課題、買い手の運営方針を確かめます。交渉が進めば、譲渡対象、想定対価、今後の調査、独占交渉権、日程などを基本合意書にまとめるのが一般的です。

基本合意書はその時点の了解事項を確認する書面です。中小企業庁のガイドラインでは、一般に独占交渉権や秘密保持義務などの条項へ法的拘束力を持たせると説明しています。最終契約に至る前でも拘束される条項があるため、署名前に弁護士と確認します。

6.買収監査を受け、最終条件を詰める

買い手は財務、税務、法務、労務、事業などの観点から対象を調査します。飲食店では、売上の再現性、原価・人件費、設備更新の必要性、賃貸借条件、許認可、残業代や社会保険、口コミアカウント等の利用条件も論点になり得ます。

調査で見つかった事実は、譲渡対価の修正、契約上の補償、クロージングまでに満たす条件へ反映されます。希望価格、算定額、成約相場は区別が必要です。純資産、将来の収益力、類似取引など複数の見方があり、算定額がそのまま成約価格になるとは限りません。最終的な価格は、対象範囲とリスクを踏まえた当事者間の交渉で決まります。

7.最終契約、決済、営業の引継ぎを行う

最終契約には、譲渡対象と対価、支払方法、実行条件、表明保証、補償、競業避止、従業員・取引先への説明、経営者保証などを定めます。署名日と、代金支払い・株式や資産の移転を行うクロージング日が別になることもあります。

クロージング後は、鍵やシステム権限、取引先情報、予約、在庫、衛生管理、レシピ等を引き継ぎます。常連客への告知や従業員との面談も、秘密保持と営業継続の両方を考えて順序を決めます。

売却に必要な期間は3つの工程で見積もる

公的なガイドラインはM&Aの工程を示していますが、すべての飲食店に共通する成約所要期間は定めていません。そのため、準備開始から成約までを一つの平均値に当てはめず、次の三つに分けて予定を作ります。

  1. 準備期間:売却方法と条件を決め、財務・契約・許認可資料をそろえる期間
  2. 探索期間:匿名で候補を探し、秘密保持、情報開示、面談を重ねる期間
  3. 実行期間:基本合意後の調査、最終交渉、契約、決済条件の充足に使う期間

準備期間は売り手側の改善で短縮しやすい一方、探索期間は条件に合う買い手の存在に左右されます。実行期間は、調査で判明した問題や第三者の同意、行政手続の要否で延びます。「急いでいる」だけでは期間は縮まりません。希望日から逆算し、誰の回答待ちで止まり得るかを工程表に置く必要があります。

特に期間へ影響しやすいのは、次の状態です。

  • 店舗別損益を説明できず、追加集計が必要
  • 株主、設備所有者、商標権者などの権利関係が複雑
  • 賃貸借契約の承継や新規契約について貸主との調整が必要
  • 買い手の資金調達が未確定
  • 従業員の承諾や処遇の設計が必要
  • 許認可の承継、変更、新規取得の判断が残っている
  • 経営者保証の解除・移行について金融機関との協議が必要

必要期間は、一般的な月数だけで判断すると見誤ります。資料整備、候補探索、外部同意・手続に残る未確定事項を洗い出し、自店の工程に置き換えて見積もります。

飲食店なら営業許可・賃貸借・雇用を先に確認する

食品衛生法上、営業の譲渡により許可営業者または届出営業者の地位を承継する制度があります。2026年8月4日に確認した厚生労働省の通知では、飲食店営業の許可を含む事業を譲渡し、地位を承継することが可能です。営業の譲渡を証する書類として、譲渡契約書の写しや、譲渡人・譲受人、施設、譲渡日などを記した覚書等が想定されています。

設備の増改築などによって施設の同一性が失われたと判断されると、新規許可または届出を求められる場合があります。必要書類や事前相談の時期は店舗所在地を管轄する保健所へ確認し、譲渡の効力発生日と手続日程を合わせます。

賃貸借についても、株式譲渡で契約当事者である会社が変わらない場合と、事業譲渡で買い手が物件を使う場合では確認事項が異なります。契約書の譲渡・転貸禁止、株主変更時の通知条項、原状回復、保証金、連帯保証を読み、貸主または管理会社と必要な調整を行います。

雇用の引継ぎは店舗運営の継続を左右します。特に事業譲渡では労働者本人の承諾が必要となるため、買い手が提示する勤務地、賃金、勤続年数の扱いなどを整理し、説明の時期と担当者を決めます。

準備の完成度が売却期間と条件を左右する

飲食店の売却は、売却方法を決めてから、資料準備、買い手探索、基本合意、買収監査、最終契約、決済・引継ぎへ進みます。冒頭で残した「会社を売るか、店舗・事業を売るか」という条件は、引き継ぐ契約や債務の範囲に加え、許認可、雇用、賃貸借に必要な手続を変えます。

まず、株式譲渡と事業譲渡のどちらを想定するかを仮決めし、店舗別損益、賃貸借契約、営業許可、雇用、借入れと保証を一枚の確認表に並べます。未確定事項が見えれば、自店固有の工程から必要期間を見積もれます。売却価格は、希望額や算定例を成約相場と混同せず、対象範囲と確認済みの事実を基に交渉することが大切です。

参考にした公的情報

※この記事は2026年8月4日時点の公表情報に基づく一般的な情報であり、個別案件への法務・税務・許認可上の判断を提供するものではありません。実際の売却方法、契約、税務申告、営業許可や雇用の取扱いは、弁護士・税理士等の専門家および管轄行政機関へご確認ください。

執筆・編集

ウルコト / 執筆・編集

中小企業庁や国税庁などの一次情報を優先し、会社売却・事業承継を初めて検討する方の判断材料を整理します。個別の税務・法務判断には踏み込みません。

  • 公的機関・各社公式サイトを優先して参照
  • 制度・料金情報は調査日と更新日を確認

NEXT READ