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業種別売却ガイド

飲食店のM&A動向と公表事例|買い手が確認するポイント

飲食店 M&A 動向を公的統計と公表事例から整理。買い手は売上規模より、店舗別収益、賃貸借、許認可、人材、ブランドの引継ぎ可能性を確かめることが重要です。売却準備も解説します。

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飲食店 M&A 動向を2026年7月時点の公開情報から見ると、外食需要は回復基調にあります。しかし、原材料費・人件費などの負担は続いており、買い手はブランドや店舗数に加えて「引き継いだ後も利益と営業を維持できるか」を見極めています。売却準備では、店舗別の採算、賃貸借契約、営業許可、人材、レシピや商標を同じ事業範囲で説明できる状態が重要です。

公表事例には、別業態を取り込む株式取得もあれば、ブランドやフランチャイズ本部を切り出す事業譲渡もあります。大型案件の条件は、小規模店の「成約相場」にはなりません。では、自店の何を整えれば、買い手は引継ぎ可能な事業と判断するのでしょうか。

2026年7月時点の飲食店 M&A 動向

経済産業省の「飲食関連産業の動向(FBI 2025年)」では、「飲食店、飲食サービス業」の実質指数は2025年に前年比3.2%上昇し、4年連続の上昇となりました。2019年以来初めて指数値が100を超えています。一方、同資料が扱うフード・ビジネス全体は、食料品流通業などの低下により前年比2.3%低下しました。需要が戻るなかでも、食に関わる業種ごとに事業環境は異なります。経済産業省「飲食関連産業の動向(FBI 2025年)」

また、松屋フーズホールディングスは松富士の買収理由として、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大と同時に、原材料価格、人件費・エネルギーコスト、為替変動の不確実性を挙げています。同社の認識からは、売上成長とともにコスト耐性や再現性を重視する買い手の視点が読み取れます。松屋フーズホールディングス「株式会社松富士の株式取得」

この環境でM&Aの目的を「店舗を買う」に絞ると、実態を見誤ります。買い手が取得したいものは、次のような経営資源の組み合わせです。

  • 既存業態と重ならないブランド、商品開発力、顧客層
  • 出店余地のある店舗フォーマットと運営ノウハウ
  • セントラルキッチン、仕入れ網、フランチャイズ網
  • 店長や料理人を含む運営人材と教育の仕組み
  • 特定商圏での認知、賃借権、商標やレシピ

この組み合わせが引き継げるなら、小規模な1店舗も検討対象になり得ます。複数店舗があっても、調理・仕入れ・集客がオーナー個人に集中し、店舗別損益が分からなければ、買い手は引継ぎ後の収益を検証しにくくなります。

公表事例から分かる買収目的と手法

松屋フーズホールディングスによる松富士の子会社化

松屋フーズホールディングスは2025年12月、松富士の全株式を取得する契約を公表し、2026年1月に取得を完了しました。公表時点で松富士は「六厘舎」「舎鈴」など9ブランド・120店舗を展開しており、買い手はラーメン領域への本格進出、ブランドポートフォリオの強化、物流やデータ活用との相互利用を目的に挙げています。同社公表資料

株式譲渡は会社そのものを引き継ぐため、契約関係を維持しやすい面がある一方、簿外債務や偶発債務も含めた確認が重要です。中小企業庁も、株式譲渡では法人格に変動がなく、未払残業代などの簿外債務や将来発生し得る偶発債務のリスクが比較的高くなりやすいと説明しています。中小M&Aガイドライン(第3版)

サンマルクホールディングスによる「牛かつもと村」運営会社の取得

サンマルクホールディングスは2024年11月、B級グルメ研究所ホールディングスなどの株式取得と、「牛かつもと村」運営会社の孫会社化を公表しました。既存の店舗開発・運営基盤と、取得対象のブランド力や海外展開を組み合わせる趣旨が示されています。サンマルクホールディングス公表資料

この事例では、単年度の利益に加え、自社の出店基盤で伸ばせるブランドかという買い手の視点を確認できます。ブランド評価は、商標の保有、レシピの文書化、品質の再現性、口コミや顧客データの適法な利用可能性によって変わります。

ガーデンによる「肉寿司」商標・FC本部事業の譲渡

ガーデンは2026年4月、「肉寿司」の商標とフランチャイズ本部事業をGOSSOへ譲渡すると公表しました。会社の株式を移す手法とは異なり、商標、加盟店の管理・経営指導など、特定の事業を切り出した事例です。ガーデン「肉寿司商標および肉寿司フランチャイズ本部事業の譲渡」

事業譲渡では承継する資産・負債を選べますが、契約、従業員、許認可などを個別に移す検討が必要です。売り手が「何を売るのか」を曖昧にしたまま価格だけを先に決めると、厨房設備は対象か、敷金はどうするか、予約サイトのアカウントを移せるかといった実務で止まりやすくなります。

いずれも当事者が公表した事例であり、小規模店の成約価格や標準的な期間を示すものではありません。非公表条件や対象資産が異なるため、案件同士の価格比較にも向きません。

買い手が確認する7つのポイント

1.店舗別の正常な収益力

月次試算表に加え、店舗別の売上、原価、人件費、家賃、水道光熱費、販売促進費を分けます。オーナー報酬、親族給与、一時的な修繕費なども説明し、調整前と調整後を混同しないことが大切です。POS、予約台帳、入出金記録、申告書の数字が大きくずれていないかも確認されます。

2.賃貸借契約と立地を維持できるか

飲食店の価値が立地に依存するほど、賃貸借契約は重要です。契約名義、残存期間、更新条件、用途制限、譲渡・転貸の禁止、保証金、原状回復、貸主の承諾要否を確認します。会社の株式譲渡と店舗事業の譲渡では貸主対応が異なり得るため、契約書を読まずに「同じ場所で営業できる」と断定はできません。

3.営業許可と衛生管理

2023年12月13日以降、食品衛生法上の営業の全部を事業譲渡する場合は、一定の要件のもと、地位承継届による手続が可能になりました。営業の一部を譲る場合は対象外で、複数の厨房区画の一部を譲る例などは承継が認められません。施設所在地を管轄する保健所へ事前に相談し、譲渡範囲と必要手続を確認します。東京都保健医療局「事業譲渡による営業許可・届出の地位の承継」

4.人材と労務

店長、料理人、アルバイトの在籍状況に加え、雇用契約、勤怠、未払賃金、有給休暇、社会保険、キーパーソンの継続意向を整理します。特定の料理人が退職すると提供できないメニューがあるなら、買い手が織り込むべき事業継続リスクです。事業譲渡では従業員の雇用は自動承継されないため、個別手続を専門家に確認します。

5.仕入れと設備

主要食材の仕入先、価格改定履歴、最低発注量、代替調達先を一覧にします。厨房設備は所有・リースの別、型式、取得時期、修繕履歴、残債を確認します。粗利が出ていても、特別な仕入条件が現経営者だけに認められているなら、その条件を買い手が再現できるとは限りません。

6.ブランド・デジタル資産

店名の商標、ロゴ、レシピ、写真、ドメイン、SNS、予約サイト、デリバリーアカウントについて、権利者と利用規約を確認します。フォロワー数や口コミ件数は参考情報にとどまり、譲渡価値は権利や利用条件を踏まえて評価されます。個人情報を含む顧客データは、利用目的や移転方法を法務面から検討する必要があります。

7.引継ぎ後の運営計画

買い手は、仕入れ、仕込み、シフト作成、販促、クレーム対応を誰が担うかを見ます。売り手の引継ぎ期間、競業避止、従業員や取引先への告知、引継ぎ直後の優先課題を協議しておくと、条件交渉とPMIをつなげやすくなります。中小企業庁も、M&A成立後の統合・すり合わせを扱う中小PMIガイドラインと実践ツールを公開しています。中小企業庁「PMIを実施する」

売却を検討する経営者の進め方

まず、会社の株式を譲るのか、特定店舗・ブランドの事業を譲るのか、希望範囲を仮置きします。そのうえで、直近3期程度の決算・申告資料、月次・店舗別損益、契約、許認可、労務、資産一覧をそろえ、数字と実態の不一致を説明できる状態にします。3期分は収益推移を見る実務上の目安です。

次に、相手探しの前に支援者との契約条件を比較します。中小企業庁の現行の中小M&Aガイドラインは2024年8月公表の第3版で、業務内容と手数料、広告・営業、利益相反、最終契約、経営者保証などの留意点を示しています。2026年7月の確認時点では、関連ページに2025年12月15日時点版の契約書サンプルも掲載されています。中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

候補先が現れた後は、秘密保持、概要資料の開示、意向表明、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、決済・引継ぎという流れが一般的です。ただし、案件ごとに順序や要否は変わります。ガイドラインも、予算に制約があっても対象を絞るなどしてデューデリジェンスを検討することが望ましいとしています。

需要回復を「引き継げる収益」につなげる

飲食店 M&A 動向から判断すると、需要回復や大型買収の公表だけを売却判断の根拠にはできません。買い手が求めるブランド、商圏、業態には幅がありますが、判断の土台は共通しています。店舗別収益の根拠があり、賃貸借と営業許可を維持でき、人材・仕入れ・ブランドが経営者から切り離されても回ることです。

売り手が最初に整えるべきものは、「誰が引き継いでも何が残るか」を裏づける資料です。数字、契約、権利、業務手順を同じ事業範囲でそろえれば、冒頭で挙げた引継ぎ可能性を買い手が具体的に検証できます。

※本稿は2026年7月24日時点の公開情報に基づく一般的な情報であり、個別案件への法務・税務・許認可上の助言ではありません。取引手法、契約、税務、労務、営業許可等は案件と地域により異なるため、弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士、所轄保健所等へご確認ください。

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中小企業庁や国税庁などの一次情報を優先し、会社売却・事業承継を初めて検討する方の判断材料を整理します。個別の税務・法務判断には踏み込みません。

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