M&Aの企業概要書とは|買い手へ渡すIMの作成と更新管理
M&Aの企業概要書(IM)で数字と説明を一致させるため、売り手が出典・対象期間・作成者・更新条件を管理し、専門家への確認事項まで整理する方法を実務的に解説します。
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M&Aの企業概要書(IM)は、買い手候補が売り手企業を具体的に検討するための資料です。整った会社説明に加え、売上などの数値がどの資料から来たのか、どの期間を表すのか、誰が説明を書いたのか、何が起きたら更新するのかまで結び付いていることが重要です。
小規模事業では、経営者の記憶、税理士が確認する決算資料、社内で作った月次資料に情報が分かれがちです。数字が同じに見えても対象期間や集計範囲が違えば、本文との食い違いが生じます。そこで、IM本体とは別に「数値の出典・対象期間・作成者・更新条件」を一行で追える点検表を持ち、未確認事項を消さずに管理します。
判断が分かれるのは、不一致をその場で修正できる場合と、税理士や弁護士へ確認すべき場合の境目です。買い手への提示を急ぐ前に、売り手自身が承認できる状態へ進める基準を具体化します。
M&Aの企業概要書(IM)とは何か
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、企業概要書を、特定の譲り渡し側の名称、事業内容、財務情報などを記載し、秘密保持契約の締結後に開示する資料と説明しています。同ガイドラインでは、一般に仲介者・FAが売り手から提供された情報を基に作成するものとされています(2026年9月21日確認)。
つまり、作成を支援者へ依頼しても、情報の起点は売り手側です。原資料を渡して終わりではありません。資料から転記された数字と、その数字を受けて書かれた事業説明を、売り手が確かめる必要があります。
日本M&Aセンター「企業概要書の作成」では、自社サービスにおけるIMの内容として、会社の沿革、事業内容、組織、取引先、財務・資産などを挙げ、必要資料を一覧にして収集する流れを紹介しています(2026年9月21日確認)。情報の種類が広いため、完成稿だけを読むと、個々の記載がどの原資料に基づくのか見えにくくなります。
最初に資料を集め、説明との対応を付ける
準備の入口は、IMの各記載と元資料を対応させることです。たとえば財務の記載なら決算書や月次資料、事業・組織・取引先・資産の説明なら、その記載を確認できる手元資料を対応付けます。ここで新しい説明を作り込むより、まず「確認できる記載」と「まだ根拠を特定できない記載」を分けます。
点検の単位は、買い手の判断に使われる記載ごとにします。資料一冊を一行で管理すると、複数の出典や期間が混ざるためです。ひとつの表や文章に複数の出典があれば行を分け、同じ原資料と対象期間に基づく記載はまとめます。後から担当者が原資料へ戻り、同じ説明を再確認できる細かさが基準です。
売却手続のどの段階で資料を整えるか迷う場合は、会社売却の流れを準備から確認すると合わせて、IMの確認時点を売却準備全体の中に置いてください。点検表は、IMの管理と買い手へ情報を渡す前の社内確認記録を兼ねます。
売り手が使うIM点検表
次の表は、出典の一般原則を基にした独自の運用案です。原典所定の分類や法定様式、義務を示すものではありません。各項目を埋めることで、原資料へ戻れる状態と、更新時に見直す範囲を明らかにします。
| 点検項目 | 記録する内容 | 判断と次の行動 |
|---|---|---|
| IMの記載箇所 | 財務表、事業説明、組織、取引先、資産など、確認対象が特定できる見出し | ひとつの欄に異なる根拠が混じるなら行を分ける |
| 数値・記載の出典 | 決算書、月次資料、社内管理資料など、実際に照合した元資料 | 出典を特定できなければ「確認済み」にせず、確認事項へ残す |
| 対象期間・基準時点 | その数字や説明が対象とする期間、または基準となる時点 | IM本文の期間表現と一致しなければ、転記ミスか集計範囲の違いかを確認する |
| 作成者 | IMの該当箇所を作った担当者または支援者 | 原資料を提供した人と作成者が違う場合は、疑問の照会先を明記する |
| 売り手側の確認者 | 経営者、社内担当、税理士など、実際に確認した人 | 未確認なら買い手向けの確定表現にしない |
| 更新条件 | 決算の更新、月次資料の差し替え、事業説明の変更など、再確認を始める条件 | 条件が生じたら元資料、数値、本文を一組で見直す |
| 状態・確認事項 | 確認済み、修正待ち、専門家確認待ちなど | 未解決の理由と、誰に何を確認するかを残す |
| 承認版 | 売り手が確認した版を識別できる記録 | 更新後の旧版を買い手へ渡さないよう、使用する版をそろえる |
埋まっていない欄は失敗ではありません。未確認を見える形にすること自体が、確認行動の起点です。空欄のまま確定扱いにすることと、「専門家確認待ち」として担当と論点を残すことは区別します。
数字と文章が食い違ったときの判断順序
決算書、月次資料、IM本文の数値が一致しないと、つい新しそうな資料へ合わせたくなります。ここで先に確かめる対象は出典と対象期間です。数字の大小だけでは、相違の原因を判断できません。判断は次の順で進めます。
- IMの該当数値が、どの元資料のどの記載から来たかを特定する
- 元資料とIMで、対象期間と集計範囲が同じかを確かめる
- 転記または説明を直せるなら、点検表の状態と承認版も更新する
- 原資料自体に疑問がある、または判断できない場合は、結論を作らず確認事項として残す
- 財務数値は、必要に応じて公認会計士・税理士へ元資料と相違内容を渡して確認する
この照合順序と確認欄は、出典の一般原則を基にこの記事が提案する実務上の方法であり、原典所定の手順や義務ではありません。日本M&Aセンター「企業概要書(IM)の準備」も、自社の解説で、誇張や虚偽を避けること、元資料自体に誤りがある可能性、財務数値を公認会計士・税理士にチェックしてもらうことを挙げています。また、専門家へ作成を依頼した場合でも、売り手自身が完成したIMを確認するよう勧めています(2026年9月21日確認)。
不一致が解消するまでは、片方への機械的な統一を保留します。対象期間が異なるケースでは、IMの見出しや注記が不足している可能性も確認対象です。原因を確定できない場合は、照合した資料と判断できなかった論点を確認事項として記録します。買い手へどの表現で開示するかは、支援者や必要な専門家と相談して決めます。
更新は元資料・本文・確認担当を一緒に動かす
IMの数字だけを差し替えると、数字を引用した本文や要約が古いまま残ることがあります。決算資料の更新、月次資料の差し替え、事業説明の変更といった条件を点検表に置き、該当行から同じ出典を使う記載まで確認範囲を広げます。
この更新管理も、出典の一般原則を基にこの記事が提案する実務上の方法であり、原典所定の分類・更新頻度・法的義務ではありません。更新条件ごとに、次の組み合わせを一緒に確認します。
- 元資料:差し替え後の資料を特定できるか
- IMの数値:元資料と対象期間が一致しているか
- IMの文章:数字を前提にした説明が残っていないか
- 確認担当:誰が再確認し、どの版を承認したか
- 確認事項:未解決の論点が更新によって変わったか
更新頻度を先に一律で決めるより、自社で何が変わったら再点検するかを明文化する方が、更新漏れを探しやすくなります。承認版の記録は、古い版と新しい版を区別するための運用です。これも法律上の保存義務を示すものではありません。
弁護士・税理士へ何を渡して確認するか
「IMを確認してください」と完成稿だけを送ると、売り手が迷っている箇所が伝わりません。相談資料は、IMの承認候補版、該当する元資料、点検表、未解決事項の一覧を一組にします。これは相談を効率化するための記事独自の整理方法であり、専門家が指定する提出物を置き換えるものではありません。
税理士や公認会計士へ財務数値を確認するときは、IM上の記載箇所、参照した決算書・月次資料、対象期間、食い違っている内容、売り手側で行った照合を示します。「どちらの数字が正しいか」という質問に、「IMではどの期間・範囲として表す予定か」も添えると、確認対象が明確になります。
弁護士へは、IMの承認候補版に加え、根拠を特定できない記載、買い手への表現を決められない箇所、更新後も残った確認事項をまとめます。何が法律上必要かを売り手が先回りして断定せず、個別案件での表現や開示の扱いを相談します。
買い手による確認への備えは、M&Aのデューデリジェンスに向けた売り手の準備も参照し、IMで使った資料と後の確認資料のつながりを保ってください。IMの段階で根拠が追えると、後から資料を探す際にも、どの記載に対応するものかを確認できます。
買い手へ渡す前の最終確認
最後に見るべきなのは、見栄えよりも、売り手が各記載を説明できる状態かどうかです。
- 数値ごとに出典と対象期間へ戻れる
- 数値を前提にした文章も同じ条件で確認した
- 作成者とは別に、売り手側の確認者が分かる
- 未解決事項を確定情報に混ぜず、相談先と論点を残した
- 更新条件に該当した箇所は、元資料・本文・承認版をまとめて見直した
この条件を満たさない欄は、推測で補わず点検表に戻して確認します。企業概要書の数字と文章を整合させる要点は、出典、対象期間、作成者、更新条件を対応付けることです。その記録があれば、修正できる不一致は原資料に沿って直し、原因が残る不一致は専門家へ渡せる具体的な問いに変えられます。
本稿は2026年9月21日時点で確認した公開情報に基づく一般的な情報であり、個別案件に対する法務・税務その他の助言ではありません。実際のIMの記載、開示、契約、会計・税務上の判断は、案件の事情に応じて弁護士・税理士・公認会計士などの専門家へ確認してください。
執筆・編集
ウルコト / 執筆・編集
中小企業庁や国税庁などの一次情報を優先し、会社売却・事業承継を初めて検討する方の判断材料を整理します。個別の税務・法務判断には踏み込みません。
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